阿久先生・・・ありがとうございました。

9月10日、 阿久悠先生を送る会が都内のホテルで行われました。 仕事で1時間ほど遅れて会場に着いたため、 大勢つめかけた人たちも少し落ち着いておりました。 正面にはグラスを片手に振り返りながら微笑む阿久先生の写真が、 波打つようなたくさんの白いカーネーションの献花に囲まれていました。 本当に多くの方々が先生をお送りに来たのですね・・・。

 一人お花を手向けてお写真を見上げると 「さゆり、この歌はいけるぞ! 」 とか「よかったね」 と励まして頂きながら拝見したお顔が思い浮かびます。

「先生は怪物だから病気なんかやっつけて下さい。」 といった時、声に出してハッハッハッ・ ・・と笑っていらっしゃいましたよね。

 1960年代の後半から今まで、 時代を感じつつ走り続け、その時代に 鮮やかな色を与えて来た先生。 阿久先生の歌を聞きながら育ち、 思い出を作って来た人々が今の大人たちであり、私たち歌い手・・。でも、先生はまだまだ書き終えていなかったはずですよね。 私の音楽プロデューサーの渋谷森久さんが10年前に亡くなった時、 「大切な同志を亡くした今、 これからは二人で一緒に多くの歌を創って行こう」とおっしゃいました。

 いまだに悲しみが現実のものと理解できずにおります。 「前を向いて、踏み出せ!」という先生の言葉が聞こえるようです。

「どんな時も、歌を創る事で応援しているよ。」とおっしゃって下さった大きな優しさ、本当にありがとうございました。今をしっかり見据え、  媚びず、常に堂々と・・。 歌を通じて多くの事を教えて頂きました。 いつも素敵だった先生、最後にお話しした時「今まで結構病気を甘く見ていたが、 今度ばかりは・・・」とおっしゃったのが、初めての先生の弱気な言葉でした。歌の怪物は歌の神様なってしまうのですか。

先生が「日本の言葉の美しさ、 力強さをもう一度信じて書きたい」とおっしゃった事、 しっかりと受け止め歌って行きます。 

石川さゆり

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