東京公演(昭和女子大人見記念講堂)は40回目のNHK紅白歌合戦出場のニュースが報じられた11月16日。奇しくも、リサイタルで初披露した女義太夫「石川さゆり誕生奇譚」にはこんなくだりがありました。紅白歌合戦を目指して歌手を志したものの、当時はアイドル全盛期。なかなかヒット曲に恵まれず……。「津軽海峡・冬景色」で満を持しての、紅白初出場! これまで支えてくれたファン達は「でかしゃった~、でかしゃった~」と大喜び。
あの、さゆり義太夫の声がまだ耳に残っている方もいらっしゃるのではないですか。
さゆりさんが「義太夫に挑戦したい」と漏らし始めたのは、まだ梅も咲かない寒い頃でした。さゆりさんの場合、スタッフへのお知らせは決まって事後報告。
「すでに人間国宝である竹本駒之助さんの指導を仰ぐことが決まっている。三味線は鶴澤寛也さんに決めている」
石川さゆり自身による、こうした名企画、名プロデュースぶりに呆然と立ちすくむスタッフ一同。果たしてステージ、舞台、新曲のレコーディングPV撮影に加え、極秘で進められていた東京五輪音頭収録など過密スケジュールの中、どうやって稽古時間を捻出するのか? リサイタル中の談話(トーク)では
「いま考えると、人間国宝に指導を仰ごうなんて、我ながら大胆でしたね」と漏らしていたさゆりさんですが、舞台の幕があがるまでは冷や汗をかきながら、寿命が縮むような思いを毎回味わうといいます。
でも、「そこにかけひきや計算があってはダメ」とも。
「いくつものスリルをくぐりぬけた後、スパッと迷いなく到達できる世界がある。
そこに到達してはじめて背筋を走る何とも言えないしあわせが訪れるのです」
そのしあわせを経験上、知っているので、「わかっちゃいるけど、やめられない」のだとか。
これまでも、民謡、都都逸、文楽コラボ、落語、とさまざまな日本の伝統芸能に挑戦してきたさゆりさんですが、「歌手石川さゆり」というフィルターを通して、エンターテインメントに昇華させる。この飽くなき挑戦はまだまだ終わりそうにありません。
2017年12月28日(木) BS日テレ 19:00~20:54 放送予定
「石川さゆり45周年記念リサイタル」