*香を聞く #さゆりこぼれ話18

 「歌詞から匂いがする」。さゆりさんが放ったこの言葉、気になりませんか?

行間から漂う匂いを頼りに、歌の情景を思い描く。言葉のもつ匂いや色。さゆりさんはそれを吐息、息と声の塩梅にあわせ「歌」として表現する。

 舞台に立つ前はおまじないのように「塗香」で身を清めるというさゆりさんですが、さゆりさんが師と仰ぐなかにし礼さんも「香を聞く」ことをとてもたいせつにしておられるそうです。

 「原稿に向かう時は決まって、まず『雲井』という香を聞き、ブルックナーを静聴します。そうすることで心が清澄になる。それは某年某月某日、今日と言うこの日に、何ができるかという問いのようなもの。できたものは決してパーフェクトではないかもしれないが、だから面白い」

 ある日、さゆりさんとの談話の中でなかにし礼先生はそんなエピソードを語って下さったことがありました。「雲井」とは「雲居」とも記され、雲がたなびくところ、遙かに離れた場所を指すようです。遙か遠い天空から言葉が地上に紡ぎ出されるとき、やはり香りが重要な媒介になっているとは! 

 「香りを聞く」というおふたりの共通点。何だか、とっても素敵だと思いませんか。

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